自分の欲求を出すことで、共感する人を巻き込んでいく
——高橋さんが商品を企画する時に意識していることはありますか?
先ほど、商品のお客さんは「自分」だと言いましたが、ほかの人が参加したくなるようにすることも考えています。僕は「一緒にやろうぜ!」といって自分からアサインするのが苦手なので、自分がやりたいことを常に周りにさらけ出すようにしてますね。一緒にやりたいという人が出て来ないかなと思って。
——なるほど。協力者が現れるように導いていくんですね。
そういうことですね(笑)。例えば、昨年「アラビックヤマト」という液状のりを使った玩具をつくったのですが……「アラビックヤマト」知ってますか?
——はい、「アラビックヤマト」懐かしい! 私も使ったことあります。
僕、小学生の頃は内気で、「アラビックヤマト」をいじりながら、容器のなかの気泡を浮かばせてひとり遊びしていました。ところが僕以外にもそうやって遊んでいた人が意外に多くて、のりとして使わず、気泡を気持ちよく割って遊ぶためだけの「アラビックヤマト」が開発できないだろうかと思ったんです。自分と同じようなユーザー同士がつながれたら楽しいだろうなって。
でも、そのためには発売元であるヤマト株式会社さんの協力がなくては始まりません。ヤマト株式会社さんような大きな会社が果たして協力してくれるのか不安でしたが、まずはお客様問い合わせフォームからメールを送ってみました。
——え、お客様問い合わせフォームからですか?
はい。企業として企画提案するのではなく、僕個人の思いを伝えたいと思って。「小学生の時、内気で一人でいた僕を『アラビックヤマト』が救ってくれた。その恩返しがしたい!」とプレゼンしました。
——そこまで言われると絶対OKしちゃいますね(笑)。
ヤマト株式会社の担当の方も最初は「何を言ってるんだろう」という感じだったと思います。でも、思いに共感してもらうことで協力していただき、最終的にはすごく前のめりになってもらえました。
(ヤマト株式会社の開発者と高橋さん)
世の中には僕のように誰かを巻き込むことが得意ではない人もいます。でも、自分のアイデアや欲求を封印せず、強い思いを出していけば、自ずとに周りが巻き込まれていくものだと思っています。
「僕がやりたい!」と旗を立ててプロデューサーになる方法もありますが、共感する人が増えていき、その人たちも積極的に関わっていくような商品づくりができれば最高ですよね。